結局目が覚めたのは午前4時前、未明のことだった。夏特有の涼しさが香る中、スマホをいじるのももったいないと感じ、出発を決意した。カラオケ店からスタート地点まではそう遠くはなかった。誰もいない月曜日の早朝だったため銚子駅前は酷く静かで、少し寂しさを感じた。これから一週間、独りで旅をするのだ。だが同時に引き返すわけにも行かず、ただ自身の限界に身を任せて行こうと思った。
出発してすぐ、犬吠崎灯台についた。ちょうど日の出あたりで、朝焼けをカメラに収めようと思っていたが、残念ながら雲によってその目論見は阻まれた。銚子駅からは数キロしかなかったが、これからの長い旅路を思うと少し気が遠くなる。何しろ1,400kmである。だがゴールは一旦無視し、一日一日出来ることをやろうと考え、そこで思考をやめた。九十九里浜を横目に田舎道を鼻歌混じりに通り過ぎ、昼過ぎになった。この旅では、できれば地元に根付いたものを食べようと思っていたので、道の駅でクジラを食べた。刺身と竜田揚げがあり、せっかくなので両方食べることにした。赤身はマグロのような味で、美味だった。竜田揚げは脂身の少ない鳥のような感じで、十分なたんぱく質を摂取できた。
昼飯を食べて少し緊張が解けたのか、眠気がやってきた。自転車で居眠り運転するわけにも行かず、(しないと思うが)仮眠を取ることにした。昼下がりの快晴な空の下、気づいたら1時間が経った。流石に目的地である館山への到着が夜中になるのは避けたかったので、少し寝足りない気持ちを抑え、出発することにした。
午前中は少し飛ばしすぎたせいか、午後はあまりスピードが出ず、洲崎灯台についたのは日の入り前になった。朝とは打って変わって、雲ひとつない空の下、夕日を見ることができた。館山まではあと少し。ここで宿と夕飯を決めることにした。宿は原則安く済ませて、旅費を浮かせる作戦のため、候補が絞られてくる。1日目の宿はシェアハウスにした。そして、夕飯はちょっとお高めな回転寿司。どちらも完璧な打線で、宿では自転車を室内に入れて頂き、寿司屋は抜群の美味しさだった。一日目はおよそ200km走った。なかなか好調な出だしだったが、初日という緊張もあり、横になったらすぐに睡魔のなすがままとなった。
続く